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度会由香。3年2組。
2年の2学期ごろから、急激に問題行動が増える。しかしながらそういった非行への予兆やシグナルは、小学校の高学年あたりから、すでに多く確認されていたらしい。
両親は結婚しないまま、母親が若くして由香を出産。以来母親が女手ひとつで由香を育ててきている。
「水崎先生、ほんと、申し訳ないです」
授業が終わって、職員室に戻ってからも、安田と工藤がひたすら頭を下げる。
「いえいえ、とんでもないですよ。私こそ、甘い対応しかできなくて、すみません」
「でも、ホントに協力的だったなら、それは水崎先生のテクニックですよ」
「水崎先生は、まだ若いから、度会もやりやすいのかもしれませんね」
教室では由香が、珍しくちょっとだけ勉強モード。
「あ、ねぇねぇ、社会の教科書、持ってない?」
「んー?待って。えーっと…。あった。はい」
武田奈美は、由香のまだ、一応は友達。由香の非行が激しくなってきたせいで、最近は由香と距離を置き始めている。
「あー、公民じゃなくて、地理か、歴史がいいんだけど」
「あー、ないねー。3年は、社会は公民だから」
「そっか」
2年に頼んだりすると、先生たちから、またいろいろ言われるしなぁ…。
3時間目と4時間目は、由香は今日はとりあえず、保健室にエスケープ。最高のぽかぽか陽気だけれど、さっき叱られたばかりということで、今はちょっととりあえず、ひなたぼっこは控えておいた。
実は由香は、この学校でもトップクラスの、保健室の常連。もちろん、ケガや病気が多いというわけではまるでない。今みたいな、“避難場所”としての利用がほとんどだ。それのほかにもうひとつ、由香はいつも、給食を保健室で食べることにしている。教室よりも、保健室の方が、なんとなく気が楽らしい。
なんていうか、ほら、保健室ってさぁ、いろんな、“しがらみ”がなくない?
そういう事情で、由香は毎日、わざわざ教室から、自分が食べる給食を1セット、保健室まで運んでいく。教室で食べる息苦しさよりも、運ぶ手間の方が、由香にとっては断然マシだ。
今日の由香は、いつもよりも早めに自分の給食を運んでくると、ちょっとだけ、隣りの職員室に出向いてぶらぶら。
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