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保健室に戻った由香は、昼休みなのにお勉強。普段は授業中にもやらないくせに、今日はなんだか、とことんやる気。
集中力とか、特にないけど、社会ならまだ、なんとか出来る。
“大化の改新”、“中大兄皇子”、“中臣鎌足”、“小野妹子”…。“カルデラ”、“シラス台地”。そっか、“シラス台地”っていうんだ。“牧畜がさかん”。ふーん…。
そんなふうにして由香は、気がつけば、なんと昼休みだけにとどまらず、5時間目が始まってから終わるまで、夢中で勉強に励んでしまっていた。
「できたっ!」
解答欄は一応、全部埋まった。さっそく水崎のトコロに持っていこう。
ちょうど掃除の時間が始まったらしく、保健室にも担当の生徒たちがやってきた。当然由香は追い立てられて、行くところもないから、そのまま職員室にズカズカ。
「おい、おまえ、用もないのに、入ってくるな」
3年の男子体育、生徒指導担当、盛岡。
「私掃除ここだもん」
もちろん私は、超適当なウソ。ていうか、いない…。あ、先に、竹富に教科書を返しておこう。
「先生、これ。ありがとう」
「あぁ、もう、いいのか?」
「うん。帰ったら、自分の探してみる」
「なかったら、また言って?余りがないか、調べとくから」
なんか、今日は、やさしいじゃん。
「ちょっとちょっと、度会さん、なにそのスカート」
3年の国語、オバさんの木下。
「見えるじゃんあんたー。短すぎー」
なにそれ。嫉妬?
「長さを、測るまでもないですね」
「30センチ以上短いんじゃないか?意味のないことをするなよー」
「アホな男しか、寄って来ないぞ?」
安田、盛岡、竹富、ホントはみんな、寄りたいくせに。
「度会さん、掃除はどこ?」
木下、ウザイ。
「さぁ、わかんない」
逃げるに限る。
由香は再び、保健室へとエスケープ。
あっ…。
廊下の向こうから、水崎と、2年の女子が3人。
由香はなんだか、たちまち呼吸が苦しくなって、胸が高鳴るみたいにソワソワ。だからすれ違う前から、ちょっとすました感じに、そっぽを向いて、“ツンッ”。
一方の水崎は、女子に群がられて、まんざらでもなさそうな笑顔。
なんか、よくわかんないけど、ムカつく…。
聞きたくなんてないのだけれど、会話が勝手に、耳に入ってくる。
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