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誰もいない家に帰って、由香はテキパキと私服に着替える。さっきの“仕事”のメールに“OK”のメールを返すと、すぐに折り返しの電話がかかってきて、簡単な最終確認。
「もしもし。はい。はい」
“仕事”。中3の由香は、自分の体を売っている。とりあえず、中1の終わりごろから売っている。
最初は由香が、個人で始めたことだった。だけどいくつかの出会いがあって、やがていつのころからか、今では由香は、“組織”に登録されていて、“組織”が“安全に”相手を斡旋してくれる。取り分は少しだけ減ったけど、“安全”には変えられない。登録しているのは、中学生とか高校生、まれに小学生もいるというから、ちょっとびっくりだ。
由香はだいたい、一ヵ月に30人ほどの相手をして、60万円程度を荒稼ぎ。
由香は意外と使わないから、実は相当な額のお金を貯めていたりする。
嫌だとは、あまり思わない。そりゃあ、たまには嫌だと思うときもある。だけど、そこにいちいち何かを感じていたら、とてもじゃないけれど、私は強くなんて生きていけない。
隠さずに言ってしまうなら、“始まる前”は、由香はいつも気が重い。どうしようもなく重いときもある。だけど、そこをどうにかこうにか、割り切ってしまえなければ、由香は、自分がいつか、男という生き物に、本当に塗りつぶされてしまうことになりそうで怖かった。
そう。すべては私が、強く在るために。
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