I miss you.

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なんか、くだらなそうな男…。 由香はすぐに、窓へと顔を戻した。 もしも今、運転席にいるのが、水崎だったなら、私はいったい、どんなことを話してみるだろう。 そんなことを思うと由香の、なぜだか体が、今さらうずいた。 由香は静かに携帯を開いて、メモリの中から、ありもしない名前を探す。 “水崎”…。 由香はそのまま、携帯に文字を。 …水崎。 “OK”。 『ヨミガナ』。 …ミズサキ。 由香はなんだか、少しだけ笑みを浮かべた。 『番号は?』。 「…」 “OK”。 『アドレスは?』。 「…」 “OK”。 『登録しますか?』。 『新規登録』。 由香は思わず、ついついクスリ。 “Yes”。 由香はにんまりが止まらない。 『“水崎”を登録しました』。 由香はなんだか、ひとり誇らしげに照れ笑い。 番号も、アドレスも知らないけれど、 ねぇ、お願い水崎。私、あんたにここにいてほしい。 由香はそっと携帯を、無意識にハートに重ねた。 家に帰ると、由香はすぐに自分の部屋へ。誰もいないからというのもあるけれど、シャワーを浴びてパジャマに着替えて、ちょっとだけ食べて、すぐに寝る。 ていうか、下手に家に誰かがいると、逆になんだか落ち着かない。 母親は、夜の仕事の影響でいつも気だるいらしくて、由香の話し相手になど、とてもなってくれないし、いないはずの父親は、金と母親の体だけを目当てに、なんだかんだで週の半分くらいは家に顔を出す。だけどなんていうか、由香にとっては、母親も父親も、ハッキリ言って、それ以外には全くの謎で、特に父親にいたっては、何の仕事をしているのか、そもそも仕事自体をしているのかどうかということすらも、由香は何ひとつ知りはしない。 ていうか、知りたくもない。もしも私の稼ぎを知られたりなんかした日には、どうされたものか、それこそわかったもんじゃない。中学が終わったら、絶対出て行ってやるんだから。 .
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