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4時間目。由香はしっかり教室チェック。今回は休み時間のうちから調べておいた。2年4組、4時間目は社会。由香は中庭にスタンバイ。4組の窓の下、壁に背中をもたれて座った。
「はーい。じゃあ今日は、2年になって、1回目の授業というわけで、今日はまず、1年のおさらいから。小テストしまーす。全部しまってくださーい」
「えぇーっ!」
「はーぁ?」
「なにそれ先生!」
あははっ。どこも一緒なんだね。くだらない反応っ。
由香はポケットから“メニュー”を取り出してバッと開いた。シャーペンでちゃんと、自分で調べた答えが記入してある。
えっと、覚えてるかなぁ私。
“院政”“承久の乱”、“イヌイット”“サリー”“ポンチョ”。えっと、Aの主食は?えーっと、“タロいも”?
「地理が嫌な人はね、昨日、ちょっと、3年生にも言ったけど、」
えっ?わっ。もしかして、その3年生って、私のこと?
由香はにんまり、頭をひょこり窓から出した。2年のビビりようがたまらない。水崎もすぐに気付いて、
「わぁ。いらっしゃいませ。度会さん」
やっぱり小さく笑ってくれる。
だから由香も気分をよくして、
「おはよう先生」
いつもよりにっこり。
「おはよう。度会さん、授業は?」
えっ?
「これが、授業」
由香は、両手で小さく、にこやかに指差した。
「これは、2年4組の授業だねぇ。度会さんは、3年2組だから、3年2組の授業に行かないと、ダメだねぇ」
うそ…。あんたも、結局、ほかの先生たちと同じなの?
由香の呼吸はたちまちつまって、小さなハートが、キュッと痛んだ。
なんか、私、バカみたい…。
由香の顔が、曇ってこわばる。
「でも、」
えっ?“でも”?
思わず由香の、瞳がキラキラ。
「せっかくだから、度会さんも、一緒に勉強しよっか」
…。え…。
「嫌?」
なんか、ズルイ…。
「私、いていいの?」
由香は思わず、そんな包み隠さない質問。
水崎は、逆にきょとんと笑顔で、
「うん。いていいよ?なんで?」
やっぱり、こいつズルイ!
小さくツンとふくらました由香の顔が、それでもやっぱり、どうしても笑顔になっていく。
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