I miss you.

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ねぇねぇ、例えば、今から少しだけ、ふっ…、とやさしい風が吹いて、私のこの、茶色い髪を揺らすの。若草色の香りを運んで、ほら、ミツバチが夢心地。その花、なんて花だっけ。いつか習ったことがある。えっと、“アブラナ”?当たってる? ねぇもしも今が、本当にそんな今だったらいいのに。 すぐ近くに花壇があって、向こうはちょっと、耳障りなガヤガヤ。ていうか、なにがそんなに楽しいの? ここは市立第三中学校の中庭。陽だまりの芝生なんて、当然由香のお気に入り。ギリギリの超ミニスカートで、寝転んでみた朝10時。世間はもうすぐ、たぶん2時間目。見上げた空なら、なんて高くて、淡い青。まだちょっとだけ寒いから、女子はけっこう、セーラー服の上に軽く学校の青ジャージを羽織る。 桜の花とか見たいなぁ。でももう、先週散ったよね。えーっと、キミは、“シロツメクサ”だっけ。昔、“かんむり”なんて作ったなぁ…。 だけど、ねぇ、こうやってまた、春が来たからって、ねぇねぇ、だからなんだっていうの? 由香はそんな晴れない自分の問いかけに、ありんこの往来を文字にして、ちょっとダンゴムシでピリオド。マルじゃなくてもいいから、三角ぐらいはほしいなぁ。 .
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