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「成績には入るんですか?」
誰かがちょっと、そんな当然の質問。
「成績にはね、予定では、50点満点で、50点だった人は、プラス5点」
「あー、それぐらいならいいよ先生」
「先生、20点だったら、プラス2点ですか?」
「そうそう。ていうか、おまえ『20点だったら』って、もっと上は、想定できないん?」
「あー、無理無理。絶対無理」
「これは、どこかに○がつくんですか?」
「マル?」
「“意欲”とか、“態度”とか、あるじゃないですか」
うざっ。なにこの男子。
「あぁ、別に、つかないよ?」
「つかないんですか?」
「点数もあまり関係ないし、○もつかないんなら、できなくてもいっか」
うわーっ。やなガキども。今年の2年、終わってない?
「いやいや、おまえら、マルがつくとかつかないとか、プラス何点とかマイナス何点とか、そんなのなくても、しっかりやれよー」
そうそう、最近の子は、すぐに、マルとか、点数とか。それさえ取ればいいと思ってる。逆に、そういうのがつかない物事は、全然ちゃんと、やらないの。
「むしろ、そういう、点数とか○とかが、つかないようなことでも、ちゃんとやる人間こそが、本当に成功するんだよ」
あれ?なかなか、いいこと言うじゃん。まぁ、私は、サボってるけどさ。
「点数とか、○とかを、どんどん取るっていうことが、悪いっていうわけじゃないよ?いい点取ったり、○をいっぱいもらったりするのは、いいことだし、それを目標にして頑張るっていうのも、素敵なこと。だけどー、“そういうのだけ”っていうのは、正直、ダメな人間だよな」
コイツ、もしかして、さりげなくアツイ?
由香は陽だまりの芝生からゆっくりと体を起こした。そして首をぐーっと伸ばして、開いている窓をちょっとだけのぞいてみた。
うーん、ちょっと、見えないなぁ…。
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