I miss you.

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水沢をはじめ、教室中がみんな、いっせいに窓の方を見た。 えっ…。わっ…。照れる…。 3年の由香の参入に、教室の空気が、一気に張りつめた。やっぱり、2年にとって、3年は怖い存在。特に窓際の女子なんて、決して由香と目を合わさないように、キッチリ顔を下に向けている。 私、なんか、嫌がられてる?な、なによ。なんか、文句あるの? すると水沢が、レストランみたいなスマイルで、 「いらっしゃいませ」 キレイな角度でおじぎした。 相手が3年生だから、2年はみんな、ほとんど全く笑わない。 えぇっ?あはっ。私って、お客様? 水沢の意外な返しに、由香は内心、微妙に戸惑っていた。それでも由香は、全く平然とした顔で、 「なんか、そこで寝てたら、聞こえてきたから」 「メニューいる?」 「あ、一応」 “メニュー”イコール、“テスト用紙”だ。 「ご注文は」 「えー…っと、じゃあ、28番」 余裕なのは、由香と水沢だけ。2年は全員、なんだか特有の緊張感。うっすらピリピリ重ーい空気が、窓の外まで伝わってくる。 「28番。かしこまりました。えーっと、『この地方の、火山灰が積もってできた土地をなんと呼んでいますか』」 うん。なんて呼んでいますか。 水沢。 「…」 私。 「…」 2年。 「…」 私。 「…」 あれっ?2年、誰か早く答えてよ。 「…」 教室中はみんな、探るみたいに由香を見ている。 えっ? 「えっ?もしかして、答えるのって、私?」 由香はきょとんと自分を指差した。 「うん。だって、注文したじゃん」 「ていうか、私関係ないし。だいたい、地理嫌いだもん」 「あぁ、度会さん、地理嫌い?」 「うん。嫌いだよあんなの」 「あんなのって、どこが嫌い?」 「うっとうしいじゃん。どうでも良さそうなことばっかり」 ていうか、私の名前、知ってんだ。まぁ、問題児だからね。この学校の先生なら、知ってて当然か。 「みんなはどう?地理が、嫌いな人。または、苦手な人。手を、挙げてみて?」 一人、二人、三人、そしてなだれ込むように一気に手が挙がる。 「けっこういるねぇ」 「ほらー」 由香は窓から身を乗り出して、両手を垂らして壁をペタペタ。それにしてもさっきから、すぐそばの席の女子は本当に気の毒だ。だって見るからにやさぐれた感じの先輩が、こんなにも近くでゆらゆら。
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