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「あのねぇ、地理が嫌な人はね、」
わっ。語りだした。
「いろんなところに、旅行に行くつもりになって覚えていけばいいよ」
「旅行?」
「うん。例えば、小倉くん、どこに行きたい?日本でも、外国でも」
水沢は、一番奥、つまり廊下側の男子に質問をふった。
「インドです」
「えーっ?インド?」
「あ、でも、お城があるよ?」
「あれって、お墓じゃなかった?」
少しだけ、ざわつく教室。
「おっ、そうそう。今、西山さんと森くんが言ってた、インドには有名な、お城みたいな、でっかいお墓があるよね。度会さん、何色のお城だったっけ」
私かよ。
「え…。白?」
「そうそう。ほら、さすが先輩」
あは。ばか。照れるじゃん。
「タージ・マハルっていう、白い、世界一美しい建造物と言われてる、あれは、お姫様の、オキサキ様かな、お墓っていうか、“ほこら”らしいけど、でっかいから、普通はお城って思うよね」
タージ・マハル?
「そんなふうにしてさぁ、みんな、どこかに旅行に行きたいなーって思ったときには、少しは調べるよねぇ。その国とか、地方のこと」
水沢の話を、みんなしっかり聞いている。由香もなんだか、ちゃんとしっかり聞いている。
「そこが、暖かいのか寒いのか。山なのか川なのか、海なのか。どんな観光スポットがあるのか。有名な食べ物は何か。お土産はどんなものがあるのか。歴史ではどんなことがあったか」
まぁ、確かに、旅行に行くなら調べるよね。
「じゃあ、外国なら?ほかに、何を調べる?田村さん」
「言葉?」
「そうやね。その国の人たちが、主に何語をしゃべっているのか。例えば、中国に行くのに、フランス語の本持って行っても、ツライよね」
「ツライ」
「意味ない」
「いかれてる」
「ほかには?島田くん」
「宗教?」
「そうそう。外国に行くときはね、宗教の特徴は、絶対調べておいた方がいいね」
「なんでですか」
「宗教っていうのは、それぞれ、いろいろ決まりごとがあってね、その決まりを守らなかったり、いないとは思うけど、決まりをバカにしたりすると、たとえ観光客でも、逮捕されたり、罰を受けたりしてしまうことがあるからね」
「コワイ」
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