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ヨウはそっと目をつぶる。どこか、遠くに思いをはせるようにぽつりと一言。
「そうだね」
「……そうだねって」
ミカはその言葉をどうとらえていいか困った。
あんまり見られたくない顔してるなって俯いたままになる。
そんなミカを知ってかしらずか、ヨウの言葉が上からふってくる。
「この猫もそう思ってくれてるといいね」
「ねこ!?」
顔を上げた先に、白と茶色の毛が目に入る。
ヨウの両手にはぐったりとした猫が抱きかかえられていた。
ヨウの体操服に包まれたその猫は微動だにしない。
そういえば、不自然に地面に置かれていたヨウの体操服は少しも動いていなかった。
「その猫、まさか――」
ミカの言葉はそこで途切れた。
ヨウは乱れた猫の毛並みを一撫でした。
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