第19章 イブと誕生日…再び

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「八代、なんで私を避けたの?」 「あの、先生から聞いちゃったんです。たか子さん、他に付き合っている人がいるって」 「そっか……」 「本当ですか?私、先生とたか子さんがお似合いだと思ってたから、混乱しちゃって、どんな顔して会えばいいかわかんなくて……」 「そうだよね……ごめん。八代にも迷惑かけちゃったね」 「他に好きな人がいるって本当なんですか?」 「それは……私にもわからないの」 私は自分の気持ちをごまかす気はなかった。 「ただ、先生を失ったと思った瞬間、かけがえのないモノを無くしたと気付いたわ」 「だったら、もう一度、先生と…….」 「私がフラれたのよ」 私は、懇願するように言いかけた八代の言葉を遮った。 「先生はきっとたか子さんのことを忘れられないと思います」 八代がきっぱりと言った。 私は、今までよりもっと八代を身近に感じて、名字で呼ぶのは違う気がした。 「ありがとう。……美奈絵」 「あ、初めて名前で呼んでくれましたね」 美奈絵が嬉しそうな顔をした。 「そうだね」 私も微笑んだ。 「私、先生のこと大好きよ。それは本当の気持ちだわ」 私は自分の心をゆっくり、確かめるように、言った。 「じゃあ…….」 「時間が必要だと思う。私も先生も。そして今、付き合っている人も……」 「そうですか……」 美奈絵は言葉を飲み込むように言った。 そして少し間を開けると、何かを決意した様な顔で言った。 「わかりました」 「え?あんた、何かするつもり?」 「いえ。お二人をずっと見守ろうと思っただけです。私は先生の助手ですし、たか子さんはお姉さんみたいなものだと思ってますから。お二人には幸せになってもらいたいだけです」 「ありがとう……」 涙がこぼれそうになったのを何とか我慢した。 「美奈絵、何か持っていっていいよ。私のおごり」 私は商品の方を見て言った。 「え!本当ですか?」 「うん」 美奈絵は1つ精油を持ってきて「じゃあ、これもらいますね」と言った。 「げ!」 美奈絵が持ってきたのはダマスクローズの5mlだった…… 「だめですか?」 美奈絵はすっごくおねだりな顔をした。 「い、いいわよ。持っていきな……」 私は苦笑した。 美奈絵が、おねだり娘だったことを忘れていた。 「じゃあ、店長の支払いでつけておきますね」 後ろから佐登美が事務的に言った。 「はいはい」 私は、肩をすくめて手を広げたのだった。  
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