第19章 イブと誕生日…再び

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それから何日かして、仕事からの帰り道、アパート近くまで坂を登って来ると、瀬谷さんの部屋の明かりが付いているのに気が付いた。 その明かりを見た私は衝動的にアパートの階段を駆け上がっていた。 そして、いつの間にか瀬谷さんの部屋の前まで来ていた。 手は今にもノックをしようとしたが、ドアまであと5センチの距離で止まってしまった。 なんて言ったらいいのか、わからなかった。 どうしたらいいか、わからなかった。 ドアの小窓には私の影が映っている。 瀬谷さんが振り向けば、その影に気付くだろう。 でも、中からは何の反応もなかった。 また、帰国早々パソコンに集中しているのかもしれない。 それとも…… 今年は何でも前向きにやってみようと決めたはずなのに、怖くて動けなかった。 衝動的にここまで来たが、結局、私はどうしたらいいのかわからなくて、ドアの小窓に影を映したまま、その場に立ち尽くした。  
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