第19章 イブと誕生日…再び

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カランとベルがなった。 「いらっしゃいませ」 振り返ると美奈絵だった。 「たか子さん、佐登美さん、こんにちは」 「はい、こんにちは」 「今日は買い物?」 佐登美が聞いた。 「ええ。クリスマス近いですからぶらぶらとしてきました」 「そう。珈琲でも飲む?あなたが淹れたのほど美味しくないけど」 「はい!いただきまーす」 「じゃあ、待ってて」 私は奥に入って珈琲を3つ淹れて、ソファで待っている佐登美と美奈絵に渡した。 「先生は元気?」 佐登美が気を利かせて聞いてくれた。 「ええ。相変わらず研究一筋になってますが」 「そうなんだ」 私は会話に参加するために、軽い口調でそう言った。 「そういえば、先生はイブの日から、またアメリカに行くんですよ」 「そうなんだ」 今度は少し重い口調で言う羽目になった。 「イブにって言っても、あの二人にデートみたいなのはあり得ませんから。本当に二人の研究が大詰めみたいなんですよ」 美奈絵はフォローするように言った。 「いや、そんなこと全然考えてないから」 私は手を横にぱたぱたさせながら言った。 本当にそれは心配していない。 「そうですか?」 「うん」 私は首を縦に大きく振って答えた。 「そうですね。たか子さんは先生のことちゃんとわかってますよね……」 「そうね」 佐登美がお澄まし顔で言った。 何か言いたげだった。 「なによ」 「別に。どっちにしても今年は私と一緒ね」 佐登美は、本当は瀬谷さんとイブを過ごさせたかったみたいだ。 「何がですか?」 「あ、美奈絵ちゃんもどう?こいつのイブの誕生日祝い」 佐登美が私を小突きながら言った。 「痛ったー……」 「あ、いいですね。どうせ私も一人でしたから」 「なによ、どうせ私もって……」 私はちょっとふくれながら言った。 「研究のせいでキャサリンも来日しないから、結局、函館帰るのやめようかなぁと思っていたんです。両親も子離れしてませんしね」 「あっそう……」 人の話を聞いていない美奈絵だった。  
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