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「タクシー呼ぶから待ってて」
後ろで佐登美がそう言うのが聞こえたが、私は店を飛び出していた。
目の前にいつもと変わらない夜景が広がる。
「どうして?いつもと何も変わってないのに……」
私は坂道をふらふらと駆け下りながらつぶやいた。
あの日以来、一度も彼に会ってない。
何も話をしていない。
それなのに、あれが最後なの?
そんな別れなんて酷過ぎる……
さっき思ったばかりだよ。
「大切なモノを失ってから気付きたくないのよ!」
坂を登って来る人たちと何度もぶつかった。
倒れている暇はない。
それでもとうとう避けきれずに、ぶつかって前のめりに倒れそうになった。
それを一人の男性が支えてくれた。
「大丈夫か」
「す、すみません……」
「どこに行くんだ?」
すぐ耳元で聞こえた声に聞き覚えがあった。
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