第19章 イブと誕生日…再び

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「今日は誕生日だろう?」 ゆっくり振り向くと、瀬谷さんが私を抱きしめていた。 「え?なんで?」 「何がだ?」 「……幽霊、ですか?」 瀬谷さんはきょとんとした。 「こうして君を抱きしめているのに?」 「だって……乗った飛行機が消息を絶って……」 「ええ!?そ、そうなのか?」 瀬谷さんは今まで見たことがないくらい、すごく驚いていた。 「先生のそんなびっくりした顔、初めて見ました」 「それは驚くさ。だって乗っていたら、今頃僕は死んでいるかもしれないんだぞ?」 「乗らなかったんですか?」 「……ああ」 「なんで?」 「いや、いろいろあって……」 瀬谷さんが、何か戸惑っている。 「何でですか?」 私は涙ぐみながら聞いた。 「いや、その、約束しただろ……」 「え?」 「今日は君にプレゼントを2つあげると約束していたから……」 ふと見ると、足下にプレゼントの包みが2つ転がっていた。 何かが心の扉をノックした。 「先生……」 私は彼を思いっきり抱きしめて何度もつぶやいた。 瀬谷さんは、照れながらも強く抱きしめてくれた。 「良かったね」 いきなり後ろから声をかけられた。 佐登美だった。 「うん」 そう言った途端、心の扉が開いて、我慢していた涙がぼろぼろとこぼれてきた。 だから、しばらく思いっきり瀬谷さんの胸の中で泣いた。  
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