第2章 クリスマス~二つの出会い

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そう言った後、その男性はこちらを見て話しかけてきた。 「オーナーの広瀬です。今後ともよろしくお願いいたします。今日は私から桐渕さんの店長就任のお祝いに、取って置きのワインをごちそういたしましょう」 「ありがとうございます」 こんな言い方をされた経験のない私は、戸惑いながらもお礼を言った。 「では、どうぞごゆっくり」 広瀬さんはウィンクをして去っていった。 その仕草に嫌みがないのが素敵な男性だった。 ただ私には、その嫌みのない仕草が女性との付き合いに慣れている感じがして、距離感を感じた。 でも、紀子さんもだけど、どうしてあんなに上手にウィンクができるのだろう? 私には無理だし、鏡で見たらきっと吹き出すだろうなあと思う。 「あら、たか子ちゃん、タイプ?」 紀子さんが何か勘違いして聞いてきた。 「い、いえ。そんな……ただ、よくあんな嫌みのない仕草ができるなって」 「そう?見た目より誠実な人よ。彼、ここ以外にも、もう1つレストランを経営しているの。まだ独身だし。今年40だったかな?年下じゃなければ私が……」 と、聞いてもいないことを話し出す紀子さん。 (独身?) 「紀子さん、まさか、彼に会わせるために連れてきたんじゃないでしょうね?」 私はちょっと抗議気味に言ったが、紀子さんは涼しい顔して言った。 「そういう訳じゃないけどね~。ここのローストビーフはおいしいわよぉ」  
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