第2章 クリスマス~二つの出会い

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しばらくして、例のワインが運ばれてきた。 が、銘柄を見て驚いた。 「シャトー……ムートン……ロートシルト?ええー!?」 お店で飲むと、普通1本5万円とかするんじゃなかっただろうか。 ソムリエが私たちのグラスに注ぐと、やはりこちらも素敵な笑顔で「ごゆっくりどうぞ」と言って下がっていった。 その後ろ姿を見送った後、 「紀子さん、こんなすごいワインをサービスで出すこの店って…料理はいったいいくらですか?」 恐る恐る聞いてみた 「結構普通の値段よ。こんなのを出してくるとなると、たか子ちゃん、気に入られたみたいね」 紀子さんはやっぱり涼しい顔で言った。 「ええー!?」 ちょっといきなりのことで動転する。 「まあ、広瀬君が本当に誘ってきたらだけど、一度付き合ってみれば?」 「紀子さん、そんなこと言われても……」 「さあさ、今日のところは美味しいワインと料理を食べよう。」 涼しい顔の紀子さんに、何かだまされた感じもするけど、とりあえず、料理を堪能することにした。 シャトー・ムートン・ロートシルトは申し分のない美味しさだった。 口に含むと、ふわっと香る複雑でいてフルーティな香り、そして、口に広がる複雑な厚みのある旨味とコク、一言で言えば……えっと、……美味しい……? うーん、経験のない私にはそうとしか言えないと、苦笑する。 ローストビーフのコースだったが、前菜は海の幸の盛り合わせだった。 これには小さなグラスで日本酒がついてきた。 その日本酒がフルーティで、料理にぴったりだった。 この辺りは、狭い海峡で育つ身の締まりの良い魚でも有名な地域だ。 歯ごたえの良さが新鮮さを感じさせた。 「この料理、すごくセンスが良くて美味しいですね」 私は思わず唸った。 「でしょ。広瀬君、素材とかいろいろこだわってるからね」 紀子さんがお刺身をつきあわせのハーブに巻きながら言った。 「あの人も紀子さんと同類ですか?」 私は料理を頬ばりながらちょっと苦笑気味に言った。 「ある意味そうだけど、彼はその姿勢で店は成功しているのよ。この街は口が肥えた人が多いからね」 紀子さんはしゃべってから、さっきハーブで巻いた刺身をたれにつけて口に運ぶ。 (この辺が、レディとその他の違いかしら……) ふと気付き、以後真似をしようと思う私だった。 その後、スープともう1品の料理が出てメインだった。  
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