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「せっかくだ。珈琲でも飲んでくか?」
「え?」
意表をつかれたが、瀬谷さんがどんな生活をしてるのかちょっと気になった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
ご招待を受けることにした。
一人暮らしの男性の部屋にこんな時間に入るのはなんだが、この人はそういうことにまるで関係なさそうなので、まあ良しとした。
中に入ると、意外と片付いていたのでびっくりした。
「どうぞ、そこにでも座ってて」
彼が示した方にはデザイナーズインテリアの部類の、ちょっと変わったソファがあった。
よく見ると、必要最低限の家具しかないが、どれも凝ったデザインの家具だった。
「趣味いいんですね……」
思わず口に出た。
「何がだい?」
家庭用エスプレッソマシーンでエスプレッソを淹れている彼が、こっちを見ないまま聞いた。
「家具ですよ」
「ああ、デザインは変わっているかもしれないが、機能に裏打ちされたデザインだ。僕はいわゆる機能美というやつが好きでね」
今度は蒸気でミルクを泡立てながら彼は言った。
「カフェラテですか?」
「もうこんな時間だし、寝る前にはこっちの方がいいだろう」
「そうですね」
カフェラテが大好きな私はちょっとヨロいてしまった。
しかも、わざわざエスプレッソマシーンで作ったカフェラテ……
さっきまで、なんだこの人はと思っていたが、なんとなく、こだわりとやさしさを持っていることがわかると見方が変わった。
(意外といい人かもしれない)
カフェラテを飲んでいる間ずっと、瀬谷さんに人工知能がどうたらこうたら、自分の研究のことを聞かされた……
前言撤回。
やっぱり、学者って人種は……
でも、
「人工の嗅覚をAIに組み込むというのは是非やってみたい研究だ。君のところの精油を時々買いに行くよ」
と言われた時は、なんとなく嬉しい気持ちがした。
売れることは良いことだ。
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