第3章 いつもと違う年末

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午後8時、le vantの今年最後の営業は終わった。 この後は恒例のオンナ二人だけの打ち上げだ。 今夜は地鶏で有名な居酒屋にした。 なにしろ、打ち上げではしゃぐわけだから洒落た店には行けない。 いや、行かない。 この1年も、思い返せばいろいろなことがあった。 そんなことを思い出して二人でけらけらと飲んで笑った。 「おじさ~ん、ビールお代わり~。あと、焼き鳥ね~」 と、何度言ったことか。 それでも、途中、二人連れの若いサラリーマンが声をかけてきたが「ごめんねー、今夜はオトコはいらないの~」と、二人で合唱する冷静さ?だった。 店を出て、紀子さんはタクシーで帰って行った。 「乗っていけば」と言われたが、なんとなく歩いて帰りたくて断った。 明日は、実家に帰るのでちょっと夜景を見ながら帰ろうかと思ったのだ。 紀子さんと別れた後、ゆっくり、くるくると回るように後ろを振り返りつつ歩き、坂道の手前に差しかかった時、何かしら言い争う声が聞こえた。  
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