第3章 いつもと違う年末

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二人で並んでアパートに帰りながら、まだ心臓の鼓動は収まっていなかった。 無言で歩くのも余計にどぎまぎするので瀬谷さんに話しかけた。 「先生」 「ん?」 「先生は年末はご実家に帰るんですか?」 「君、その先生ってのは正確じゃないな。僕は君の先生じゃない。瀬谷で結構」 「あ、すみません」 「まあ、謝ることじゃない。僕は帰る実家はなくてね。ずっとアパートにいるが、それが何か?」 「あ、そうなんですか。変なこと聞いてすみません。」 「それも別に謝ることじゃない。自分で話したことだ。今の所は気に入っているよ」 瀬谷さんがそう言ったので、私は後ろを振り返った。 ちょっとした夜景が広がっている。 「そうですね。私もすごく気に入ってます」 「夜景が好きなのか?」 瀬谷さんも振り返って見ながら聞いた。 「ええ。この街の夜景は大好きです」 「そうか。奇遇だな」 彼はぼそっと言った。 その言葉にちょっと驚いたが、彼の心の中が見えた気がした。 「先生……いや瀬谷さんって、ロマンチストなところもあるんですね」 私は笑いながら言った。 「えっと、やっぱり先生にしてくれ。あらためて名前で呼ばれるのも何かしら違和感を感じる」 彼は少し照れている感じだった。 そんな会話をしながら、二人でゆっくりと坂道を登っていった。 アパートの前まで来ると、レイチェル邸は既に閉まっていた。 (そっか、もうそんな時間か) 2階に上がり、瀬谷さんにおやすみを言って自分の部屋に戻ろうとした時、彼が戸惑い気味に声をかけてきた。  
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