第3章 いつもと違う年末

12/29

9231人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
部屋の片付けをした後、レイチェル邸に寄ってから買い物に行くことにした。 レイチェル邸も営業は昨日までだった。 今日は店が閉まっているので玄関に回りノッカーを叩く。 「はーい」 エプロン姿のさゆりさんがぱたぱたと出てきた。 「こんにちわ」 「あら、たか子ちゃん。どうしたの?」 さゆりさんはニコニコと嬉しそうに言う。 (なんかいつも幸せそうだな~) 思わずこっちも笑ってしまう。 「今年もいっぱいお世話になったからお礼を言いに来たの。お掃除してたの?」 「あらあら、こちらこそ。そうそう。今ね、大掃除の途中なのよ。うちの人も庭掃除してるのよ。さあ、入って入って」 相変わらず、忙しくしゃべるさゆりさんだった。 「じゃあ、ちょっとお邪魔します」 私は指先でちょっとを示しながら言った。 居間に行くと庭を掃いているマスターが見えた。 私に気付き、にこっとして手を挙げながらやってきた。 「やあ、たか子ちゃん。いらっしゃい。」 「こんにちわ。今年もほんっとにお世話になりました」 そう言ってぺこっとお辞儀をした。 「いや、いや。こちらこそ。」 マスターがソファに座るように促したので、遠慮なく座った。 しばらくしてさゆりさんが珈琲とショコラケーキを持ってきてくれた。 「たか子ちゃんはお掃除終わったの?」 さゆりさんが珈琲をマスターに渡しながら聞いた。 「とりあえず!…終わりました」 前半にアクセントをつけて言いながら、笑ってごまかす私。 自分では終わったつもりだからいいと思う。 「そっか。終わったのなら、まあ、ケーキでも食べていきなさい」 マスターが苦笑した。 「はい。いただきま~す」 「あれ?」 さゆりさんの持って来たケーキは見覚えがなかった。  
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9231人が本棚に入れています
本棚に追加