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「今日はお休みなのに新しいケーキ作ったの?」
「ううん。もらい物なの。隣の坂の下に新しいケーキ屋さんができたんだって」
さゆりさんもそのショコラケーキを食べながら言った。
「へえ、前に雑貨屋さんだったところかな?」
「多分ね。あら、美味しいわね~」
ある意味商売敵なのに、ほんとに美味しそうに食べているさゆりさんだった。
「さゆりさんのケーキの方が美味しいよ」
私の方が悔しくなってつぶやいた。
「たか子ちゃん、ありがとね。いつもやさしいよね」
娘を見るようなやさしい目でこっちを見ながらさゆりさんが言うので、少し恥ずかしくなってしまった。
「たか子ちゃん、実家に帰るんじゃないのか?」
マスターは、私が何も荷物を持ってないので不思議に思ったらしい。
「ああ、今年は帰るのやめました。実家の方も片付いてないみたいで」
「そっか。お兄さん夫婦が同居だもんな。じゃあ、今夜はうちで過ごすか?」
マスターに言われて、それも良かったなと思いつつも、瀬谷さんとの年越し蕎麦は自分で言い出したことなのであきらめた。
「マスター、ありがと。でも、ごめんね。今夜はちょっと予定がね」
ぺこっと頭を下げた。
マスターとさゆりさんが、ちょっと驚いたように顔を見合わせた。
「あら、佐登美ちゃんと……?」
さゆりさんが、ためらいがちに聞いてきた。
「あ、いや……」
ちょっと言い出しにくくて口を濁したら、マスターが満面の笑顔で乗り出し気味に言った。
「オトコができたか?」
「違います!」
即座に否定する私。
「えっと……ちょっといろいろあって、その流れから隣の瀬谷さんと年越し蕎麦を食べることになりまして……」
しどろもどろに、言葉遣いも変になりながら私は言った。
「瀬谷さん?」
「あの?」
またしても夫婦で顔を見合わせる二人。
「そうか、それじゃあ、オトコというわけじゃないな……」
ちょっと落胆気味にマスターが言った。
(なんで?)
「えっと……瀬谷さんだとそういう風には見えない?」
「え?やっぱりそういう関係なの?」
さゆりさんがまたびっくりする。
「いや、そういう訳じゃなくて、ただ、あの人だとそう見えないのかって思っただけで」
私、何を言い訳してるのやら。
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