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「そうだなあ。彼は研究一筋の学者みたいだからなあ。」
マスターが腕組みしてアパートの方を見た。
「そうねえ。私もそう思うわ。恋とかに興味なさそうな学者さんだからねえ」
さゆりさんが顎に指を当てながら、やっぱりアパートの方を見た。
ほんと、お似合いの夫婦よね、と思いながらも、
「とりあえず、そういう関係じゃないから」
と、私は言った。
とっとと逃げ出すために、残りのショコラケーキを頬ばる。
「じゃあ、私行くね。買い物してこなくちゃ」
立ち上がろうとするとマスターが言った。
「もしかして、そば粉とか買いに行くのかい?」
「はい?」
言い当てられて動きが止まる私。
「だったら、うちのを分けてあげるよ。俺も今夜は蕎麦を打とうと思って買ってきてるんだ」
「わあ、ほんと?嬉しい!どこで買おうかと悩んでたの」
「ちゃんと、挽きたてを仕入れたから、美味いぞ。そうだ、当然打ち立ての方が美味しいから、夜、食べる前にうちにおいで。一緒に打てばいい」
「わお!そうします。じゃあ、9時頃にでもまた来るね」
「うふふ。二人とも楽しそうね」
そういうさゆりさんも楽しそうだった。
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