第3章 いつもと違う年末

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急に声をかけられ顔を上げると、白衣姿の八代美奈絵だった。 「あ、こんにちわ」 私は、やな奴に会ったなという思いと、人恋しさを埋めてもらったような気持ちとで半々だった。 「こんにちわ。何してるのよ。こんなところで」 八代はちゃんと挨拶だけはしてぶっきらぼうに聞いてきた。 「だって私、ここの卒業生ですから」 「だから、何か用事なの?」 彼女は不機嫌そうに言う。 「あなた、年はいくつ?私より年下だと思うけど?」 真顔で少しきつめの口調で言った。 目の前で余裕のない相手には少し大人になれる。 「えっと、だから、何か用事なんですか?」 私の意図を察してどぎまぎしながら微妙に丁寧な言葉遣いにする彼女。 「私がいた頃とだいぶ変わったって聞いたから、ふと、見てみたくなったの」 「そ、そう。……ですか」 わたわたしてるのがちょっと面白い。 意外といい子なのかもしれないと思った。 「じゃあ、私はこれで」と、慌てて去りかけた彼女に声をかけた。 「ねえ」 「はい?」 彼女は中途半端に振り返り、私に目を合わせずに答えた。 「あなた、瀬谷先生の研究室よね?案内してくれない?」 「え?な、何でですか?」 今度ははっきりとこっちへ向き直りびっくりしている。 かなりビビっている彼女がとても面白い。 「先生に用事があるの」 真面目な顔で答えた。 「え、えっと……こっちです」 八代はおどおどしながら案内してくれた。  
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