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「はい、どうぞ!」
八代が珈琲を持ってきた。
「ありがと。いただきます」
一口飲むと、びっくりすることにすごく美味しかった。
「美味しい!」
「え?そ、そうですかぁ?」
八代が急に照れた笑顔になる。
「うん。なんで?普通こんな研究室の珈琲って作り置きでまずいもんじゃないの?」
「いえ、うちは先生がこだわってエスプレッソマシーン置いてるんです。それにだいぶ淹れ方も指導されましたから」
「いや、それだけでは美味しく淹れられないよ。八代さんが腕がいいんだね」
「えへへへ」
彼女は完全に照れてる。
「じゃあ、もしかしてカフェラテも淹れられるの?」
「ああ、八代君は淹れられるよ」
瀬谷さんがやっぱり普通の顔で自慢げ?に言った。
「じゃあ、お代わりにカフェラテもらっていいかな?」
最初の1杯をあっという間に飲んで私は言った。
「はい!先生もいります?」
「ああ、頼むよ」
「はい。わかりました」
そういうと、八代はニコニコと笑顔で奥に入っていった。
私も笑顔で彼女の背中を見送ると、瀬谷さんに向き直った。
「先生、いい娘じゃないですか。今度うちの店で何かプレゼントしてあげたらどうですか」
「なんで?」
きょとんとしている瀬谷さんだった。
(ああ、こういう人だった……)
しばらくして八代がカフェラテを持ってきてくれた。
やっぱりすごく美味しかった。
彼女にこんな取り柄があるとは……ちょっと負けた感じがした。
そういえば、研究室に入っているくらいだから、頭もいいんだよね……
ふと、そのことに気付いて自己嫌悪に陥りかけたので、話題を振った。
「そういえば、先生、今何の研究をしているんですか?」
(あ……しまった……)
「今かい?」
瀬谷さんが答えようとすると八代が先に言おうとした。
「先生はこの間、えっと……」
「桐渕よ」
名前を聞いてなかったことに気付いたらしい。
「桐渕さんのお店で買った精油で研究しているの」
八代もカフェラテを飲みながら言った。
「そう。人は瞬時に何の匂いかわかるよね?それをAIにさせたくてね。精油の成分はわかったから、その成分の組成ですぐに判断できないかとちょっといろいろね」
「はあ……」
何となくはわかったが、実際にそれをやるには大変なんだろうなと思った。
思ったが、そのまましばらくその話を聞かされた……
(うう、アホだ私……)
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