第3章 いつもと違う年末

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で、要約すると、一つの匂いが判別できるようになると、いろんな匂いを判別できるようにデータベースを作るけど、それには精油の成分が純粋で良いらしく、うちでいろいろ買ってくれるみたいな……まあ、ありがたいことだ。 あんまり長居して研究の邪魔をしては申し訳ないので帰ることにした。 夜もどうせ会うのだ。 「あ、そうだ。八代さん、今夜私が打った年越し蕎麦を先生と一緒に食べることになっているんだけど、一緒にどう?」 もうなついた彼女ならいいかと思って誘ってみた。 「あ、そうなんですか。でも、残念ながら今日、実家に帰るのに飛行機のチケット取ってるんです」 「そうなんだ。飛行機?実家はどこ?」 「北海道の函館です」 「へえー、この街と並んで夜景が有名なとこだよね」 「はい。きれいですよ。まあ、この街には負けるかな」 「私はまだ見たことないんだよね」 「じゃあ、是非一度見に来てください」 「うん、夜景は好きだから、そのうちきっと」 素直に話すとちゃんと話せた。 やはり、彼女はほんとはいい娘のようだ。 「あ、もうこんな時間だ。八代君、そろそろ行かないとまずいんじゃないか」 瀬谷さんが時計を見て言った。 「あ、そうですね。バスで駅前まで行って、電車乗り換えて……大丈夫だと思います」 彼女は行程を想像しながら時間を考えて答えた。 荷物は既に用意して持ってきてるみたいだ。 「八代君、大晦日まですまなかったね」 「いえ、いいんです。私が先生の一番の助手のつもりですから」 (へえー、頑張ってるって本当だったんだ) 「じゃあ、タクシーを呼びなさい。タクシー代あげるから」 「本当ですか?わーい、嬉しいな。」 八代は最初の時みたいな彼女に戻って、嬉しそうに電話をかけた。  
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