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「そういう桐渕さんの下の名前は?」
「たか子です。桐渕たか子」
「で、その由来は?」
「ん?……そう言われたら、由来って考えたことなかったな。だって、たか子って意味なさそうだし、普通ですよね?」
「意味のない名前なんてないんじゃないのか?きっとご両親は何かの思いをその名前に載せたと思うよ」
私はきょとんとしてしまった。
「どうした?」
カフェラテを口にしながら彼は聞いた。
「先生って、時々ロマンチストですよね?」
「は?今のどこがロマンチストなんだ?」
「あ、いやいや、いいです。気にしないでください」
私はお澄まし顔でそう言ってカフェラテを一口飲んだ。
瀬谷さんと一緒にいると面白いなぁと思う。
30年生きてきてこんな人は初めてだ。
そう考えると30才なんてまだまだだなあと思えて、また少し前向きになれた気がした。
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