第3章 いつもと違う年末

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「そういう桐渕さんの下の名前は?」 「たか子です。桐渕たか子」 「で、その由来は?」 「ん?……そう言われたら、由来って考えたことなかったな。だって、たか子って意味なさそうだし、普通ですよね?」 「意味のない名前なんてないんじゃないのか?きっとご両親は何かの思いをその名前に載せたと思うよ」 私はきょとんとしてしまった。 「どうした?」 カフェラテを口にしながら彼は聞いた。 「先生って、時々ロマンチストですよね?」 「は?今のどこがロマンチストなんだ?」 「あ、いやいや、いいです。気にしないでください」 私はお澄まし顔でそう言ってカフェラテを一口飲んだ。   瀬谷さんと一緒にいると面白いなぁと思う。 30年生きてきてこんな人は初めてだ。 そう考えると30才なんてまだまだだなあと思えて、また少し前向きになれた気がした。  
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