第3章 いつもと違う年末

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「あ、すまない。寒いな。帰ろうか」 「いえ、もう少し見ていたいです。だめですか?」 私はまだこの時間を続けたかった。 「ああ、かまわないよ」 彼はちょっとうれしそうに言った。 「じゃあ、僕のコートのポケットに手を入れなさい」 彼のコートは大きめのダウンのコートだ。 「え?」 私がきょとんとしていると、彼が私の右手を取ってコートの左のポケットに入れさせた。 瀬谷さんがこんなことをするとは思えなかったので驚いた。 でも、彼は普通の表情をして夜景をみていた。 どうやら必然でしたことで、彼には照れるようなことじゃないらしい。 「先生、左手も寒いです。こうしましょ」 私は彼が前を留めてないのを見て思いついた。 彼の前に立って彼のコートの中に入り、両手を内側のポケットに入れて前にたぐり寄せた。 背中に彼がくっついていて抱きしめられる感じになった。 彼の頭が私のすぐ上にある。 「たか子君……」 さすがに彼も戸惑っているようだ。 でも、気にせずに私は言った。 「暖か~い!」 「そ、そうか」 そう言われて彼は断れないみたいで、仕方なく、自分の手もポケットに入れてきた。 リバーシブルなのか、内側と外側のポケットは中で繋がっていた。 今度は少し照れているのがわかる。 手が触れた瞬間心臓が高鳴ったが、私から彼の手を握った。 こんなことができる自分自身への驚きと、私の心臓の鼓動が聞こえてしまわないかという戸惑いがあったが、相手が瀬谷さんなので気にしないようにした。 まだ会って1週間しか経たない彼とこんなことしてていいのか、自分自身よくわからないが、今はすごく暖かい気持ちで満たされていた。 ずっとこうしていたいと思うくらいに。  
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