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少し安心した。
広瀬さんはある意味一目惚れじゃなく、私のことを知った上で興味を持ってくれたようだ。
普通の恋は、ここが好きとか、ここが気が合うとか、積み上げていって生まれるプラス思考の恋だ。
でも、一目惚れというのは、最初に好きになったところから、いろいろ知られていくうちに、ここは合わないとか、ここが嫌だとか、マイナスされていく恋のような気がする。
だから、一目惚れされるのは好きじゃない。
バスの彼を断ったのはそれもある。
「広瀬君にはバラしたこと内緒よ」
紀子さんは口に指を当てて言った。
「どうしよう?私隠し事って嫌いなんですよね。さっきも実家に帰らなかったこと言ったし……」
「あ、そうだ!で、何かあったでしょ?」
紀子さんがさっきのことを思い出した。
やぶへびだった……
「じゃあ、バラしませんから」
きっぱり真顔で言う私に、「う゛っ……」と口ごもる紀子さんだった。
「紀子さん、お昼どうぞ」
さらに私が外へ手で促すと「はあーい……」と言いながら、しぶしぶ出掛けていった。
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