9231人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
お店が終わる午後8時前に、広瀬さんがシルバーの外車で迎えに来た。
紀子さんが後片付けはいいからと言ったが、私は片付けてから行くと広瀬さんに伝えた。
確かに、そういうところは自分の責任だと思って、甘えられない。
外に出ると、広瀬さんが車のドアをさっと開けてくれた。
そういうことに慣れていないので、ちょっと戸惑う。
セレブな彼と付き合うとしたら、慣れなきゃいけないのだろうか。
標高700mの山の上へは結構広い道路が通じているので、車だと楽に行ける。
それでもある程度の坂が続くので、遅い車があると渋滞してしまうこともある。
広瀬さんの車はパワーがあるようで、すーっと坂を登っていく。
「この車はなんて言う車ですか?」
彼が言ったのは有名なスポーツカーのメーカーの車種だった。
「高そうですね……」
「うん、まあそれなりに。でも、大好きな車なんだ」
「かっこいいと思いますよ」
「ありがとう」
彼は自分の車を褒められて、少し少年のような表情を見せた。
こんなに頼りがいのある感じの男性に、ふっとこんな表情を見せられると誰もが惹かれていくんじゃないだろうかと思った。
最初のコメントを投稿しよう!