第5章 天空のレストラン

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山の上は少し台地状になっている。 意外と全体的に木が茂っている感じで、見晴らしがよくない。 でも、店のあるホテルは、その台地の端にあり、目の前を遮るものがないので、素晴らしい夜景が広がる。 店自体は、ホテルから一段下がったところに別棟で建っていた。 ホテルの経営者は別だそうだ。 いわゆるテナントとして入っているということだろう。 店の前にも駐車場があり、広瀬さんはそこに車を停めた。 降りようとするとやっぱり外からドアを開けてくれた。 (慣れなきゃ、慣れなきゃ) 店の方を見ると建物の周りが明るく光っている。 その向こうにある夜景が想像できる。 店の入り口は海辺の店と同じだった。 小さな木の看板に「広瀬」と彫られている。 ドアに近づくとスッと向こうに開いた。 「いらっしゃいませ、桐渕様」 ドアの向こうにドアマンが立っていた。 「どうぞ」 広瀬さんに勧められて中に入る。 (名前を呼ばれた……) そんな扱いに一人でどきどきしていた。 エントランスから見下ろすと、いきなり目の前に夜景が広がり息を飲んだ。 街の方向と左右はほとんど壁が無く、全てガラス張りだった。 2つのフロアが階段状になっており、どのテーブルからも素晴らしい夜景が見えるようだ。 「すごい……」 私は光の波に目を奪われて、立ちつくした。 「でしょう。ここに来るお客はみんなこのエントランスで息を飲むんだ。どうぞ、こちらへ。席からでも見えるから」 広瀬さんに促され、一番下の角の席に座る。 右から左まで夜景が視界を占める。 特等席だ。 私はずっとその夜景に目を奪われ続けた。 気が付くと、広瀬さんが私を見ていた。 「あ、すみません。つい……」 「いや。料理は既に用意させてもらっているから、心ゆくまで見てていいよ」 「ありがとうございます。この街の夜景は大好きなんです」 「うん。紀子さんから聞いてる」  
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