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1月も終わりの頃、2階のブティックの移転が完了し、紀子さんの画廊の話が動き出した。
「ちょっと設計事務所に顔出してくるね」
最後の私がお昼を終えて戻ってきた午後3時過ぎ、紀子さんは、そう言いながらコートを羽織った。
「はい。任せてください」
佐登美が答える。
「二人ともよろしくぅ~」
紀子さんは手をひらひらさせながら出掛けていった。
佐登美は派遣会社を辞め、1週間前からle vantの店員となった。
派遣時代、販売系もこなしていたので仕事に慣れるまで2日とかからなかった。
帳簿も扱えるので、どちらが店長かわからないくらいだ。
まあ、まだ精油の知識は私にはかなわないので、安心だが。
既に打診はしていたが、1月の中頃、ブティックの移転日が決まるとあらためてどうするか尋ねた。
佐登美は「明日、店に顔出すね」と言った。
そして、翌日のお昼前、店にやって来てこう言った。
「会社辞めてきました。よろしくお願いします」
紀子さんはその対応の速さが気に入って「よし、給料1.5倍!」と言い出す始末だった。
「あの、それじゃ、私とほとんど同じじゃ……」
私が言うと、紀子さんはこちらに向き直ってこう言った。
「よし、いい友達連れてきたから、たか子ちゃんも給料アップ!」
(わん!佐登美ありがとー)
持つべきものは友である。
「ということで、売り上げも2倍だね!」
さらに続けられた紀子さんの台詞に、冗談だと知りつつも、私たちはこそこそと逃げ出した。
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