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ふと、正午を告げる鐘の音が街に響く。彼はそばに置いていた荷物を手に持ち、立ち上がった。
「行っちゃうの……?」
少女が悲しそうに呟いた。彼は一際優しく見えるように、微笑んで見せた。
「ああ、そろそろ行かないと。三日もこの街に滞在してしまったからな」
手を振って出口へと向かう彼。彼の背に向かって少女はこの数日の間、訊き忘れていたことを思い出した。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんの名前、訊いてない」
オレ?と呟いた後、彼は答えた。
「オレの名前はクレスト。クレスト=ノルンだよ」
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