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短い三連休。仁は課題の合間を縫って静岡にある実家に帰って来ていた。
電車とバスを乗り継いで近道二時間半、小さい課題なら出来上がっているのでは?と仁は少し悔しくなる。
本当は帰るつもりはなかったのに弟達に泣き付かれたら拒否など出来なかった。
「お帰りなさい、疲れたでしょ?」
「ただいま。やっぱりこっちは寒いね。」
仁は玄関に座り靴を脱いでいると後ろから走ってくる足音が聞こえたかと思うと突然、背中に衝撃を受ける。
首に回された細い腕に「やっぱり叶わないな」と思う。
「お兄ちゃんおかえりなさいっ」
「ただいま、忠治。」
立ち上がりたいのに背中にべったりとくっつき甘えて離れようとしない弟に「仕方ない」と諦める。
後ろに腕を回すと忠治を背負いどうにか荷物を持ってゆっくりと立ち上がった。
忠治はキャッキャッと喜び細い腕を首に回してギュウーとしがみ付いてくる。
「首は絞めるなよ?」
少し困った様にそう言えば「はーい」と何ともご機嫌な返事が返ってきて益々仁を落胆させた。
廊下を歩いていれば今度は信が出迎えてくれる。
「おかえりなさい」と笑顔で言い、その後は当然、飛び付かれ両手が塞がっている仁は為す術なし。
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