【プロローグ】

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初夏の日射しに輝く緑の中を、一台のスポーツカーが走り抜けていく。 車が走る為に十分な幅をもつアスファルトの舗装路。 等間隔に植えられた街路樹によって区切られた歩道には、煉瓦が敷き詰められていた。 私立統稜学院大学の構内は、その辺の一般道などとは比べるのもおこがましいほど、整備が行き届いている。 構内をはしるこの道路は、俺、水瀬透哉(みなせ とうや)のお気に入りの場所だった。 愛車であるシルビアの運転席にすっぽりと収まっている俺の身体は、身長百六五センチ、体重五十キロと、二十歳を迎えた成人男子としては少々(あくまでも少しだ)華奢な身体つきだ。 それに加え、母親譲りの女顔のせいでかなり幼く見えてしまうが、運転技術には少しだけ自信がある。 それは何故かって? それは、俺が走り屋だから。 国内は当然、国際的なレースにも参戦している現役プロドライバーの父親と、元レースクイーンの母親を両親にもつ俺は、物心ついた頃にはカートで遊んでた。 そんな家庭環境のお陰で、今となっては立派な走り屋になったという訳。 もちろん将来的にはプロのドライバーを目指している。 そんな俺のお気に入りは、整備の行き届いたこの道を、車で走り抜ける事。 ただし、速度は尋常じゃないけどね。 今日も一日の講義を終え、快調に車を飛ばす俺の耳に、排気音が流れ込んできた。
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