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「透哉?」
背後から突然呼び掛けられ、透哉は飛び上がりそうなほど驚いた。
振り返ると、今まで誰も居なかったはずの門の中に人が立っている。
バランスのとれた身体に、端正な顔。
「りょ、燎臥?」
透哉は目の前に見知った顔を見つけ、安堵の溜め息と共にその人物の名前を呼んだ。
「ああ、やっぱり透哉だ。
よく来てくれたね」
笑顔を浮かべながら門を開く燎臥は、先日のスーツ姿とはうって変わってラフな出で立ちだ。
白いシャツに黒いスラックスという格好のせいか、はたまた無造作に下ろされたままの前髪のせいか、二十歳そこそこの爽やか好青年に見える。
「よかったぁ……。
呼び鈴もないし、どうしようかと思ったよ。
ここ、燎臥の家?」
ようやく知り合いに会えた安心感から、透哉は笑いながら広い敷地を眺めた。
「そうだよ。
両親は別の場所に住んでるけどね。
さ、入って」
燎臥は相変わらずの笑顔で言うと、すごいすごいと連発している透哉を招き入れた。
手入れの行き届いた庭園を抜けて、屋敷の大きな両開きの扉に辿り着く。
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