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扉の奥に広がっていたのは、透哉の想像を遥かに上回る広い玄関ホールと、西洋のお城にでもありそうな大階段だった。
「すげぇ……」
もはや数える気にもならないが、本日何度目になるかわからない言葉を口にしながら、透哉はきょろきょろとホールを眺め回した。
日本の家屋とは比べものにならないほど高い天井には大きなシャンデリアが下がり、大階段へと続く紅い絨毯には、塵どころか染みひとつ見当たらない。
あまりのスケールの大きさに、ほう……と溜め息を吐く透哉を見つめ、燎臥はにこやかに笑っている。
「お帰りなさいませ。燎臥様」
落ち着いた声音に、透哉は声のした方を振り返る。
「ああ古宮。ただいま」
古宮(こみや)と燎臥が呼んだのは初老の男性で、メタルフレームの眼鏡をかけた、いかにも執事然とした人だった。
燎臥に向かって丁寧に頭を下げたあと、古宮はちらりと鋭い視線を透哉に走らせる。
───感じ悪いなぁ……。
どう贔屓目に見ても歓迎されているとは思えない古宮の態度に、透哉は居心地悪いことこの上ない。
それを救ってくれたのは、燎臥だった。
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