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「紹介するよ古宮。
彼は水瀬透哉くん。
統稜大の二年生なんだ」
「……はじめまして」
何となく気乗りしないまま、透哉はぺこりと頭をさげた。
「東雲家で執事をさせて頂いております、古宮と申します」
慇懃無礼な態度とは、こういう事を言うんだな、などと思いながら、透哉は燎臥を見上げた。
早速古宮に苦手意識を持ってしまった透哉は、早くこの場を立ち去りたかった。
「古宮、紅茶を頼むね。
俺たちはサンルームにいるから」
「畏まりました」
古宮の態度はいつものことなのか、気にした様子もなく燎臥は言う。
燎臥の言い付けに従うべく、古宮が建物の奥に入っていくのを見届けて、透哉は息を吐いた。
そんな透哉を見て、燎臥が笑う。
「悪いね、透哉。
初対面の相手にはいつもああなんだよ、古宮は。
でも、悪いやつじゃないから、許してくれるかな」
古宮の無礼な態度を本人に代わって詫びながら、燎臥はサンルームへと透哉を案内した。
豪華な大階段を登り、広く長い廊下を進む。
角を曲がること三度、美しい紋様の刻まれた扉を開くと、太陽の光を最大限に採り入れるための大きな窓が透哉を出迎えた。
大きな窓の外にはバルコニーがあって、白いテーブルセットが置かれていた。
「俺のお気に入りの部屋だよ。
どうぞ」
燎臥はまるで、どこかの国の王子様のように透哉をエスコートする。
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