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明らかに後ろから聞こえてくる音にバックミラーを確認すると、ぴったりと一台の車が張り付いていた。
スピードメーターを確認するまでもなく、一般道で出すような速度で走っていないのは確かだ。
まさか俺以外に構内の道路をこんな馬鹿みたいな速度で走る奴がいるとは思わなかった。
ついつい闘争本能に火が点いてしまう俺は、まだまだ子供なんだろう。
右足に力を入れて、アクセルを一気に踏み込む。
───さて、何処までついて来れる?
速い車には興味を惹かれるのが走り屋のサガ……だよな?
加速しても遅れることなく張り付いてくるのを確認して、俺は嬉しくなる。
前にも同じ様について来ようとした奴はいたけど、加速について来る奴はいなかった。
時速百四十キロ。
いくら道幅があるとはいえ、ここは高速道路じゃない。
カーブもあれば、歩行者だっている。
なだらかなカーブを曲がりきった時だった。
街路樹の間から車道へと、人影が飛び出してくるのを俺は視界の端に捉えた。
───なっ!?
無意識に手がハザードランプに伸びる。
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