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さよなら
朝焼けに目がくらみ
君の笑顔が霞む
柔らかな笑い声が
無機質なビルの隙間で
わずかに響く
午前6時を告げる
駅前広場の大時計
ゆったりと動き始める街
大通りから少し外れた
コンクリートの壁に挟まれ
僕らだけの時が始まる
笑いながら泣く君の手を取り
小さく嘘をつく
「きっと、大丈夫」
そう言った僕は
たぶん笑ってはいなかった
君の目からは涙がキラリ
君の口元からは歯がキラリ
わかっていた
君は言わないだろうって
わかっていた
君は止めないだろうって
大通りから少し外れた
コンクリートの壁に挟まれ
僕らだけの時が終わる
君に背を向けうつむいて
最後に一つ嘘を吐く
「じゃあ、またね」
必死に涙をこらえ
笑顔を無理矢理に作った
悲しげな君の声が
無機質なビルの隙間で
わずかに響く
「じゃあ、またね」
君もまた嘘を吐いた
砂時計の砂は
もう落ちきっていた
最後の言葉は
お互い言えなかった
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