全ての始まり

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翌日――。 「昨日なんで大崎来なかったん?めちゃくちゃ面白かったのに」 教室の隅で自称「日本覚醒」とひたすら謎なネーミングをした徒党を組む男5人がいた。 「昨日は塾さ」 大崎と呼ばれた青年は亮和の問いに答えた。 大崎翔太――成績優秀で、日本覚醒のメンバーもよく彼に勉強を教えてもらう。 「大森マイクの持ち方やたら謎やったからな」 泉水が半笑いで言った。 「絶対とりあえず右手回しとけば勝ちとか思ってるからな」 前日現場にいた三人は大爆笑した。渦中の人間の大森も照れ笑いしている。 「僕さ、癖でね、マイクあってもなくても歌うとき右手回っちゃうんだ」 大森悠史――裕福な家庭に生まれ、サッカーに目がない。メンバー一背が低く、唯一標準語を話す。 「昨日あの後大森と晩飯マック行ってんけど、カラオケの名残でまだポテト持ちながら手ぐるぐるしてたし」 直人が言って、また笑いが起きた。 西村直人はご存じ亮和の幼なじみ。水泳をやっていたおかげで肩幅の広い亮和と対照的で、細身で大森の次に小柄だ。 「あ、そうそう」 大森が思い出したように言った。 「昨日帰りに思ったんだけどね」 一瞬言葉を切る。 「みんなで肝だめし行かない?」
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