序章

2/2
前へ
/157ページ
次へ
  夏特有の蒸し暑さが終わり、少し冷たい風が吹く季節。 それでもまだ多少の暑さを感じるのだろう、男が一人冷房の効いた部屋で休んでいると男がもう一人入ってきた。 「なぁ、お前武器庫の鍵どうした?」 「え?そこに掛かってるだろ?」 そう言いながら男が指差した先に視線を移すがそこには目当てのものが掛かっておらず、ただ取っ掛かりとなっている小さな棒の様なものがポツンとあるだけ。 男はガタン!と慌てた様に立ち上がると急いで鍵が掛けられていたのであろう棒の近くまで近付くと辺りを見回した。 「ない……鍵がない!?」 「何っ!?」 男の言葉にもう一人は何か胸騒ぎを感じたのだろう、入って来たドアから出て行くともう一人も慌てて後を追った。 二人が走っていくと、武器庫の入り口のすぐ横では倒れている仲間の姿が飛び込んでくる。 「おい!どうし…!」 急いで駆け寄りその身を起こすも仲間は既に息絶えており、男は胸ポケットへ入れていた通信機器を取り出した。 その間にもう一人がゆっくり扉へ近付き、ドアを開けて中に誰か居ないか確認するがどうやら人の気配はない様だ。 しかし、暗くて何も見えない事から男は一度視線を外し、入り口横の明かりを付けて再び目を戻す。 そして男は慌てた。 確かに最後に見た時はあったいくつかの銃や手榴弾などの銃器類が消え、元々置いてあった場所はタダの空き場所と化していた。 「……武器が、なくなってる……?」 そう呟いた男の声は、まるで空気中に霧散するかの様に消えていった───。  
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

734人が本棚に入れています
本棚に追加