日常が崩れる時

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  「ふわぁ~あ…」 一瀬は眠い目を擦りながら黒板に書かれている文字を写していく。 写し終えると丁度教師はチョークを置き、説明を始めたので一瀬もシャーペンを置き窓の外へと目を落とした。 (あ~…昨日ゲームやりすぎたかなぁ~…) そんな事を考えながらボーっとしていると、不意に外を歩く人の姿を見付ける。 黒一色と言っても過言ではないその風貌は学校と言う場には酷く異質。 更には格好に似合わない大きな荷物を持ったその人物は迷う事なく道を進んでいき、こんな時間に学校関係者ではなさそうな人物が学校内をうろついているのに興味を持った一瀬はしばらくその人物を見ていた。 (なんだあの荷物…キャンプでもしにきたっつーのか?) 「…ま。……やま…丸山っ!」 「っ!?」 突然自分の名前を呼ばれ反射的に立ち上がると、そこには教科書を丸めて立っている教師の姿が見える。 「丸山…私の授業でよそ見とは良い度胸じゃないか?」 「すいません先生…!ですが、先生の頭で反射する光が眩しくて前を向けなかったんです!」 そうふざけた次の瞬間、至る所で声を殺して笑う様子が見られ一瀬は教師の持っていた教科書で思い切り頭を叩かれてしまう。 そして教師は踵を返し、教壇へと戻るとその後ろで一瀬は叩かれた箇所を押さえながら机に突っ伏した。 「っでぇ~…!」 「一瀬…!お前ナイス…!」 浩が親指を立てながら必死で笑いを堪えていると、一瀬はそんな浩を見てだろ?と目で合図した。 そして思い出した様に一瀬は再び窓の外へ目を落とすが、既に人の姿は見えなくなっており首を傾げた。 (結局…あれはなんだったんだ……?)  
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