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教師が教室を出て行ってから三十分は経とうとしているが教師は一向に戻ってくる気配が見えない。
もう視聴覚室を見てきたのか教室を出ていった生徒は全員が戻って来たのだが、教師がまだ戻ってきていない事に多少疑問を持った様だ。
「あー…っつか遅い。もうそろそろ授業も終わるぞ?」
「やった授業サボり~!次の授業もサボれっかな~?」
「浩…お前ホント能天気すぎだな」
そう言いながら清孝は弄っていたパソコンを閉じる。
「でも真面目な話、次の授業もねぇんじゃねぇ?三十分も経つのに誰も来ねぇじゃん」
そう言って浩が携帯を開くと浩は首を傾げ、疑問の声を上げた。
「……あれ?」
「どうした?」
「や…俺の携帯圏外なってんだけど」
「はぁ?」
浩の言葉に今度は一瀬が疑問の声を上げた。
「んなワケないだろ?」
「ホントだって!ほら!」
差し出された携帯を見ると、確かにそこには圏外と表示されている。
その事実に一瀬と清孝は互いに顔を見合せた。
「……マジだ」
「トコモなんか使ってるからだ。その点俺のはエーエスだから…」
しかし、そこで清孝の言葉が途切れた。
不思議に思った二人が清孝の携帯を覗き込むと、そこには浩の携帯と同じ様に圏外と表示されていたのだ。
「おいおい…って事はまさか俺のもか?」
慌てて一瀬も携帯を開く。
すると一瀬の携帯も同じ様に圏外と表示されており、周りも異変に気付いたのか声が上がった。
「おい…俺のも圏外だ!」
「ちょっとどう言う事~?」
「マジ有り得ないんですけど~」
「一体何が…?」
教室内がざわめく中、不意に微かにだがスピーカーから雑音が走る。
殆んどはその雑音が聞こえなかったみたいだが、しばらくするとやがて声が聞こえて来た。
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