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これは、ちょうど三年前。
アラタ達が中学に上がる頃の話である―
―お父さんとお母さんが死んじゃった。
僕の兄ちゃんの誕生日に。
兄ちゃんのバースディケーキを買って帰る途中に、トラックに引かれてしまったんだ。
ケーキも、お父さんもお母さんもぐちゃぐちゃ。
今兄ちゃんは、ずっとボォっとしてる。
僕は…、僕はまだ実感がわかない。
また明日になれば、お父さんとお母さんがお家にいる気がする。
…そうであって欲しい。
それで、遅れちゃったけど兄ちゃんの誕生日みんなで祝おう…??
ねぇお父さん。
お母さん…―
「駆け落ちなんかするからよ。」
「ほんとっ。
あの女だけ死んでしまえば、うちの家系に泥がつかなくてすんだのにねぇ。」
「あの女。確か母が娼婦だったのよね??
養護施設で育てられて、結局一時期あの女も娼婦やってたんでしょ??
…カエルの子はカエルねっ。」
「サトシさんも、なんであんな女選んだのかしらねぇ。」
「そういえばっ、子供のアラタ君とカツヤ君はこれから誰が預かるの??」
「私はごめんよぉ。
同い年の娘もいるしっ。」
「私も無理だわっ。」
葬式中だと言うのに、わざとらしい大きな声で噂話をする親戚一同。
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