僕らのすれ違い

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アラタ、カツヤの二人は早速都内にある祖父のアパートへ引っ越しをし、アラタは新しい中学校へ、カツヤは派遣の仕事へと通い始めた― アラタが通う私立◯×中学校は、◯×高校の付属中学で、金持ちの集まる学校でもあった。 中学校の渡り廊下を歩くアラタと担任。 「色々事情はお祖父さんから聞いているよ。 まだ辛いと思うけど、新しい環境で楽しい思い出いっぱい作りましょうね。」 担任の金井先生は優しくアラタに話しかけた。 「…はい。」 無表情で言うアラタ。 アラタは元々は引っ込み思案な性格な上、綺麗な顔立ちだが、鋭い眼球のせいで第一印象がいつも悪かった。 (…この子扱いが難しいわね。 なんか怖いし…。) 案の定少しアラタの態度に戸惑う金井先生。 「今日からこのクラスがあなたのクラスよ。 合図したら教室に入ってね。」 教室の前でヒソヒソとアラタに言う金井先生。 「…はい。」 相変わらずアラタは無表情に返事をした。 「よしっ。じゃあ先入るから、ここで待っててね。」 ニコッと笑って、金井先生は教室へ入って行った。 合図を待つアラタ。 (正直面倒くさい…。 お兄ちゃんと一緒に派遣で働いてもよかったのに…。) 人付き合いの苦手なアラタは、最初この転校の話を嫌がっていた。 しかし大人に反抗できるほどの力や思春期独特の強い気持ちを、アラタはまだ持っていなかった。 ドアの向こうから金井先生の目があった。 手招きしている。 アラタは静かに教室へと入っていった。
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