Hors d'oeuvres 02

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僕に差し出されたその手をみて、その肉付きの良さに、何て美味しそうな手なのだろうと、マジマジと見つめてしまった。 「やっぱり平気じゃなさそうだね」 僕がぼーっとしていたからか、彼は言った。 僕の状態はいつもこんな感じだから、特別体調が悪いとは思わなかった。 でも、差し出された手を退けては失礼だと思って 「そうかな?」 と応えてその手を掴んだ。 「ありがとう」 何となく、本当に何となく僕は微笑んだ。彼も頬を赤くさせて笑った。 笑ったの久しぶりだったけど、彼の赤い顔を見ると、その白い肌にはどれだけの血が流れているのだろう?と考えるばかりだった。 掴んだ彼の手は手触りが良くてとても気持ちいい。ふっくら程よい肉つき。 僕はクラクラする。 ――――おいしそう―――― 「ほら、こうすれば楽だろう?」 彼はそう言って僕を左肩に寄せて肩を支えて一緒に歩いてくれた。 ほんとだ…うん、結構楽だ。 そう思う。けど―――――― 「家はどこなのかな?」 おいしそうな匂いが彼からする―目眩が…する… 「ここら辺に住んでるのかな?」 クラクラ―髪が顔におりてくるせい? 「森の奥深くだよ」 フワリクラリ―鼻孔をくすぐる血の匂い ―クラリ― 僕は思わず彼の左腕を掴んだ。それと同時に僕のその衝動が強くなった。 きっと彼はこの世のどんな食べ物より美味しいのだろうな、と思った。 その腕も血色が良くてプニプニで、そこに流れる血も、きっと甘い密のような味がしそう。 鼻孔をくすぐる甘い甘い血の匂い。 僕は彼を食べたくなった。
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