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僕に差し出されたその手をみて、その肉付きの良さに、何て美味しそうな手なのだろうと、マジマジと見つめてしまった。
「やっぱり平気じゃなさそうだね」
僕がぼーっとしていたからか、彼は言った。
僕の状態はいつもこんな感じだから、特別体調が悪いとは思わなかった。
でも、差し出された手を退けては失礼だと思って
「そうかな?」
と応えてその手を掴んだ。
「ありがとう」
何となく、本当に何となく僕は微笑んだ。彼も頬を赤くさせて笑った。
笑ったの久しぶりだったけど、彼の赤い顔を見ると、その白い肌にはどれだけの血が流れているのだろう?と考えるばかりだった。
掴んだ彼の手は手触りが良くてとても気持ちいい。ふっくら程よい肉つき。
僕はクラクラする。
――――おいしそう――――
「ほら、こうすれば楽だろう?」
彼はそう言って僕を左肩に寄せて肩を支えて一緒に歩いてくれた。
ほんとだ…うん、結構楽だ。
そう思う。けど――――――
「家はどこなのかな?」
おいしそうな匂いが彼からする―目眩が…する…
「ここら辺に住んでるのかな?」
クラクラ―髪が顔におりてくるせい?
「森の奥深くだよ」
フワリクラリ―鼻孔をくすぐる血の匂い
―クラリ―
僕は思わず彼の左腕を掴んだ。それと同時に僕のその衝動が強くなった。
きっと彼はこの世のどんな食べ物より美味しいのだろうな、と思った。
その腕も血色が良くてプニプニで、そこに流れる血も、きっと甘い密のような味がしそう。
鼻孔をくすぐる甘い甘い血の匂い。
僕は彼を食べたくなった。
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