とんび

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嫌なことがあった   哀しい気持ちになった   気がついたら、電車に乗ってここにいた   ふと、空を見上げたら、1羽のとんびが飛んでいた   ぴーひょろろろー   とんびが気持ちよさげに、舞っている   とんびはいいよな…ぼくは呟いた   悩みもなくて、自由に空を飛んでるだけでさ…   ぴーひょろろろー   それが聞こえた訳ではないのだろうが、とんびがまた鳴いた   ゆっくりと、ぼくの上を舞いながら   ぴーひょろろろー   ん?前にもこうやって、とんびを見たことがあったけ?   いつの事だったかな?   そうだ、あれは就職で、東京に行く前の日だった   あの時は希望に満ちて、とんびを見てたっけ   仕事に、恋愛、結婚…いろんなことを夢見てたな それが、今はどうだろう   辛いことがあっただけで、ふさぎこんでた   仕事からも、家族からも逃げ出して…   ぴーひょろろろ   力強くとんびが鳴いた   まるで、ぼくをはげますように   ぴーひょろろろー   わかったよ ぼくはとんびに答えた   ありがとう、とんび君 励ましてくれて   昔の気持ちを思いだしたよ   一度の失敗がなんだ 僕には、家族も友達もいるんだもんな   ぴーひょろろろ   わかってるよ ぼくのいる場所はここじゃないんだもんね   ぴーひょろろ   ぼくの頭上の、とんびの鳴き声に答えるように、1羽のとんびが飛んで来た   親子だろうか?夫婦だろうか?   ぴーひょろろろ ぴーひょろろろー 2羽のとんびは仲良く鳴くと、山のほうに飛んでった   ぴーひょろろろ   さあ、ぼくも帰ろうかな 妻と子供達のところへ 心配してると、いけないからさ ありがとう、とんび君   ぼくは駅のほうに歩き出した   ぴーひょろろろー   背中でとんびの鳴き声を聞きながら
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