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「それじゃあ行って来るよ」
手を振りながら酒場から出て行った。
「おう、頑張れよ」
その背中を見送りながら声をかける。
布袋の中を見た。
数十枚の金貨と一枚の紙が入っていた。
紙を取り出し、そこに記された文字を見る。
そこには目的地であろう場所の名前が書かれていた。
それをじっくり眺め、歩き出した。
それが十日前。
今はその目的地にいる。
草の緑が地面の大半を締め、一本の古木が存在感を主張している。
木造の家が数軒並んだだけの、至極簡素な村だった。
前向きに言えば、これから発展していく村。
後ろ向きに言うならば、ドが付く程の田舎だ。
「……うっわぁーーーお」
唖然とするしかなかった。それほどまでに物が無かった。
と、道の真ん中で止まっていたのだから当然目立つ。
だから声をかけられるのはやはり当然だった。
「キミ、こんなところでぼうっとしてどうしたんだい?」
すぐ後ろから声をかけられた。
急いで振り返れば、一人の女性が立っていた。
だが、着ている服が普通ではなかった。
鎧だ。それも鉱石製のではない。モンスターの素材を加工した鎧だ。
砂色の甲殻を組み合わせ、関節等の随所にはマカライト鉱石による補強がされている。
そしてなにより目を引くのが、その双肩から突き出した二本のねじれた角のような物がなにより目立った。
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