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「さてと、椅子を持って来るからちょっと待っててな」
そう言って部屋の奥に姿を消した。ガタゴトと何かを動かす音が聞こえて来るが、何をしているのかは判らない。
手持ちぶたさになったので、もう一度回りを見渡す。
そこで、銅色の箱が目に入る。正確にはその中の物に。
歩み寄り、見えている柄に手を伸ばす。
鋼色の持ち手が顔を覗かせているそれを片手で掴み持ち上げようとする。
だが、少し動いただけで持ち上がる気配は無い。
箱の中を覗き込み、奥側にあるもう一つの持ち手に手を掛け、もう一度持ち上げる。
そうしてようやく持ち上がったそれは、甲殻を複数組み合わせて丸形にされ、闇の様に黒く、紅蓮を映したかの様な棘が幾本も飛び出している。
その棘はただ紅いのではなく、ほのかに熱を放っている。
なにより重い。
両手で持っているが、腕にかかる負担が凄まじい。
「へぇ?あんたそれ持てるんだ」
いつの間にか部屋の奥から戻って来ていた女性が声をかけてきた。
振り返ると、鎧を着た女性が小脇に背もたれの無い簡単な椅子を抱えて、そこに立っていた。
「貸してみな」
そう言って女性は椅子を置き、手を出して来る。
その手に片側の持ち手を差し出す。
女性は片手でその物体を掴み、軽く振るってから箱に戻した。
「それじゃあ椅子に座って。それから話そう」
女性はベッドに腰掛けながら帽子の様な物を外す。
自分も椅子に腰掛けると、女性が話し始めた。
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